スライサのサポート比較

PrusaSlicer(Slic3r) 2.0.0とSimplify3D 4.0.0を使って同じ形状、傾きでサポートを自動生成させてどちらが剥がしやすいかを検証してみます。

設定について

Simplify3Dについては、Prusa Researchから提供されている設定ファイルをプリセットとしてロードした後、印刷速度をPrusaSlicerと同じにしてます。

サーポート生成を有効にしてGコードを出力しますが、ほかのパラメータは基本デフォルト。PrusaSlicerとSimplify3Dのパラメータを厳密に合わせているわけではないです。Simplify3D側の設定がどれほど吟味された値が設定されているかは怪しいかもしれない。

元のデータ

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傾きは2つのスライサで一致させてあります。

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印刷スピードやレイヤ高さは一致しているにもかかわらず、印刷時間を比較するとSimplify3Dが37分、PrusaSlicerが55分とかなり違いました。

サポート生成をOFFにすると両者ともに約22分と同じくらいになったので、サポートの生成で大きく差があることが分かります。PrusaSlicerのほうが時間かかってますが、どのパラメータが利いているのか、よく分かりませんでした。確かSimplify3Dはサポート生成で特許を持っていたはずなので、パラメータというよりも製品の違いと割り切ったほうが良いかもしれないです。ちなみに使用するフィラメントの長さはほぼ同じでした。

PrusaSlicerのスライス結果。モデルの境界部分は細かなサポート形状になってます。

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PrusaSlicerのサポート設定。デフォルトのままです。

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Simplify3Dのスライス結果

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サポートはPrusaSlicerに合わせて、高密度サポートをONにしてます。

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印刷結果

今回はPrusament PLAのシルバーのフィラメントを使って印刷してサポートを剥がす手間と、サポート面の印刷精度にフォーカスして検証します。

  • PrusaSlicerの結果

PrusaSlicerの印刷結果です。球体の上部の印刷名が荒れますが、どのFDMプリンタでも同じです。ぱっと見た部分に特筆すべきところはないです。

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ラジオペンチでサポートをベリベリ剥がしていきます。溶着して剥がれない部分はなかったです。悪くないです。Simplify3Dがサポートに定評があるのは知ってたので、ほかのツールは相当悪いものと思ってましたがそんなことないです。(PLAだからなのかもしれないですが)

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オーバーハング90度部分(水平面)の印刷面は荒れてますが、これはどうにもならないと思ってます。モデルを傾けてなるべく水平面を減らす理由はこれだと思います。それ以外の斜めの面は想像以上に綺麗でした。傾けたためにエッジが丸みを帯びているのは、ノズル径0.4㎜、レイヤ0.2mmの精度の限界でしょう。

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  • Simplify3Dの結果

早速剥がしてみて。。。と思ったら、印刷が失敗している箇所が!よく見ると、サポートがなくて垂れている箇所がある。

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よく確認すべきでした。サポートがない部分があります。

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サポート自動生成のパラメータをいじってもなかなか埋まらないので、PrusaSlicerに合わせるように全体をサポートで埋めてもう一度スライスやり直し。結局40minsほどになりました。

うーんこれは不具合だと思います。ちょっとイケてないです。

サポートを追加して再チャレンジ

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Simplify3Dの印刷結果

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今度はちゃんと印刷できてます。

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サポートをベリベリ剥がしたところ。確かにPrusaSlicerよりもゴロっと剥がれて、サポート除去の手間は少ないです。

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問題の裏面。向かって左側がPrusaSlicerで、右側がSimplify3Dです。Simplify3Dの結果のほうがエッジ部分のダレが目立ちます。

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Simplify3Dで印刷した結果の単体アングル。厳しい言い方すると、「サポートが剥がれやすい≒品質が落ちる」をそのままな気がしないでもない。。

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今回Simplify3Dを試したのは、Prusa i3 mk3sを導入してからずっとPrusaSlicerを使ってきました。元々Simplify3Dをもってたので、「有料だしさらに品質向上するかも」という期待で、特にサポート部分がFDMプリンタの課題なので、テストしてみました。

Simplify3Dはパラメータも多いので、最適解が分かればどのスライサよりも結果は良くなると思いますが、この「最適解」を見つける労力が半端ないです。今回もSimplify3Dが目立った結果だせてないのはこの最適解に合ってないパラメータが多いからだと思います。

ただ、1年以上3Dプリンタ触ってきて思うのは、「パラメータ探し」するために印刷するのではなく、作りたいものを造形するために印刷しているのであって、「パラメータ探し」で疲弊するのは時間もお金も勿体ないです。

PrusaSlicerはフィラメントの種類ごとのプリセットが容易されていてデフォルトのままで性能出せていると思います。サポート出力はずっと気になってたのですが、昔のイメージよりもかなり性能UPしているのじゃないかと。もう「これでいいじゃん」という気になってます。

PrusaSlicerのLayers editing

触っていて偶然気が付いた機能ですが、Simplify3Dの可変設定に似た機能で、レイヤ高さだけを可変設定できる機能っぽいです。マウスで選択するだけで滑らかにレイヤ高さを可変設定されて直感的で良いです。

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たぶんこのMinとMaxの範囲で可変になるのだと思います。

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可変設定で印刷した結果が下図になる。レイヤ高さが小さくなって、積層痕がなくなっているのが分かる。ただ以下の結果だと高さと射出量があってないのかバリが出ている。

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別アングル。手っ取り早く効果が出るのは悪くない。

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手前が可変で、奥がレイヤ高さ固定(0.2mm)の結果。写真はないけど、裏側も層が細かくなります。

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ちなみにSimplify3Dでは、定義したレイヤ範囲ごとに全てのパラメータを可変設定できます。こちらのほうが高機能ですが、直観性に少しだけ劣るのと、設定できてもたぶんレイヤ高さぐらいじゃないかと。PrusaSlicerはこのあたり割り切って使い勝手優先にしたのかもしれない。

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所感

古いバージョンはどうか不明ですが、PrusaSlicer-2.0.0はサポート生成ロジックが改善されているようですし、Simplify3Dがサポートの剥がしやすさをウリにしてましたが、そこまでの差を感じなかったです。(もっと複雑で脆い形状の場合で、差が出るのかもしれない)

ただ最新のSimplify3DのVer4.1では、たくさんの細かな改善が図られているので、間違いなくスライサの最先端を突っ走っているのは間違いないと思います。が、フリースライサもどんどん改善されているみたいなので、$150払う気持ちはどんどん薄れていくのではないかと。。

PrusaSlicerもPrusa i3に最適化されているし、無料なのでとりあえずコレでも全然問題ない気もします。

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