今回はAnycubic製Photon-S印刷パラメータについて投稿します。
そもそもDLP方式の印刷パラメータは?
FDMと比べるとものすごくパラメータが少ないです。以下はPhoton_Workshop1.00のパラメータです。
Parameter | デフォルト値 | 内容 |
---|---|---|
Layer thickness(mm) | 0.05mm | 1層ごとのレイヤ高さ |
Normal exposure time(s) | 8 | 通常時の露光時間。一番重要なパラメータ |
Off time(s) | 1 | 露光のあとの消灯時間?Zリフトする前の一呼吸おく時間な感じ? |
Bottom Exposure Time(s) | 60 | プラットフォームに張り付ける初期層の露光時間。短いと剥がれ落ちてしまう |
BottomLayers | 3 | 初期層のレイヤ数 |
Z Lift Distance(mm) | 4.00 | 積層したあとにペリっと剥がす距離? |
Z Lift Speed(mm/s) | 3.00 | レジンプールにプラットフォームを下す速度? |
Z Retract Speed(mm/s) | 3.00 | ペリっと剥がす速度? |
Enable AA | 0 | アンチエイリアシングの回数 |
自分の場合、メカニカルな造形物をまず考えているので、CADで指定した寸法と実際の形状の寸法の誤差を知り、調整する必要があります。例えば2mmシャフトを通す穴を2.1mmで空けたとして、実際には1.9㎜にしかならなければシャフトは通らないです。微調整や2次加工が必要なのは認識してますが、調整が難しい形状もあります。特に上記パラメータであれば、露光時間が最も影響が高いです。露光時間を長くすると、どんどんレジンが成長するように硬化していきます。それはボトムレイヤをみればわかりますが、60secも長くすると約0.5mm以上のブリムが形成されます。
まずはこの露光時間だけでも、使用するレジンで目安として実寸との関係を把握しておきます。
露光時間テスト用データと使用したレジン
Fusion360で上図のようなデータを作成して、露光時間を変えながら印刷&寸法測定をやってみます。ちなみにレジンのメーカや色によっても露光時間が違います。今回は本体についていたAnycubic製の緑(半透明)と別途購入した黒レジンで試します。
露光時間と実寸の関係
プラットフォームから脱落すると面倒なので、ボトムは60secのままにしておきます。ブリムができるので設計寸法と大きくことなりますが、ここは減らすと失敗しやすいので精度は無視します。
ほかの長さをノギスで計測して、どのくらいの誤差があるかを見ていきました。
- 緑レジンの結果
設計寸法の精度を重視すると、推奨時間よりも短い露光時間4secほどで妥協できる寸法になりました。ただ穴寸法は減らしてもどうしても小さい穴になるので、設計時に大きめにすることにします。露光時間を長くするほどどんどん形状が外側にオフセットするように大きくなります。(穴は小さくなる)
ちょっと気になったのは、Z方向の寸法がどのパラメータでも小さくなります。0.2mmは意外と誤差が大きいです。これも設計時に加味したほうが良さそうです。
- 黒レジンの結果
緑レジンが4secで良さそうだったので、そのまま同じ設定で印刷した結果が以下です。
緑レジンに比べて、実寸法が小さく痩せた感じになる。穴はちょうどいい感じです。緑と同じ寸法にするなら露光時間を5secぐらいだと一緒になるかも。
インターネットの試行錯誤のパラメータと比べると、露光時間が半分くらいの結果になりました。フィギュアなどの有機的な造形物とCAD設計するようなメカニカルな形状では違うのかもしれない。メカニカルな設計だと機械的な強度も重要なので、破損しやすい形状はそもそも設計として間違っているので、4secほどの短い露光時間でも問題ないかもしれない。
あと、2次露光をUVランプを使ってやりましたが、露光時間の短い(4sec)造形物に対してやると、少し反ります。写真の上部のドーナツ状の穴がちょっと歪んでました。強いUVでの2次露光は注意したほうが良いかもしれないです。
先人たちのパラメータ
ちなみに先人たちが試行錯誤したパラメータが以下にあります。
特に透過率の高いカラーレジンの露光時間が長いことが分かります。何を基準にして何を印刷して最適としているかは不明ですが、参考になると思います。
https://w.atwiki.jp/sla3dprinter/pages/13.html
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1crvzMnt_8NJXAsABinoIhcOjE8l3h7s0L82Zlh1vkL8/edit#gid=0